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暗号化を行わず暴露のみで脅す「ノーウェア・ランサム(No-ware Ransom)」の脅威

公開:2026-08-30 最終確認:2026-08-30

【背景と概要】

企業のデータを暗号化してシステムを停止させ、復旧の身代金を要求する従来の「ランサムウェア攻撃」から、新たな形態への移行が進んでいます。

それが、端末やサーバーの暗号化処理を一切行わず、機密データや個人情報の「窃取・持ち出し(Exfiltration)」のみを行い、「金を支払わなければ盗み出したデータをダークウェブ上で一般公開する」と要求する「ノーウェア・ランサム(No-ware Ransom / Data-Only Extortion)」の手口です。暗号化を行わないことで、従来のセキュリティ検知をすり抜ける巧妙な攻撃として脅威となっています。

【なぜ攻撃者は「暗号化」を放棄し始めたのか】

攻撃者側にとって、データを暗号化することには技術的リスクや不都合が大きくなってきたためです。

  1. EDRやアンチウイルスによる即時検知を回避できる

端末内の大量のファイルを短時間で暗号化する挙動は、現代のEDR(端末監視ソフト)によって最も高精度に「ランサムウェアの攻撃」として検知され、プロセスが強制停止されます。一方、正常なWeb通信に紛れてデータを静かに持ち出す挙動は検知されにくく、攻撃の成功率が高まります。

  1. 「バックアップからの復旧」という企業の防御策が無力化される

企業側は不変バックアップ(WORMストレージ等)を準備することで暗号化攻撃に備えてきました。しかし、ノーウェア・ランサムにおいては自社にデータが残っているか否かは関係なく、「外部に情報が流出したか」のみが脅迫の材料となるため、企業のバックアップ防御策が無意味化します。

  1. 攻撃ツールの簡略化と潜伏の長期化

複雑な暗号化・復号プログラム(ランサムウェア本体)を開発・保持する必要がなく、既存の管理ツールやデータ転送ツールを使ってデータを盗み出すだけで完了するため、攻撃者側のハードルが下がります。

【被害企業が直面する致命的なビジネスリスク】

システム自体は正常に稼働していても、個人情報や技術データの流出リスクにより、個人情報保護委員会への届出義務、顧客への通知コスト、制裁金リスク、顧客からの損害賠償請求、そしてブランドイメージの深刻な低下に直面します。

【ノーウェア・ランサムに対抗する多層防御】

「システム復旧」から「データの外部持ち出し(Exfiltration)知識の防止」へ防御の軸足を移す必要があります。

  1. データ流出防止(DLP)とCASBによるアップロード制限

社内PCやサーバーからの大量データのダウンロード、未許可クラウドストレージ(Dropboxや個人ドライブ等)へのデータ送信をリアルタイムで検知・遮断するDLP(Data Loss Prevention)を運用します。

  1. データの常時暗号化(DRM/IRM)による無価値化

重要データファイルそのものを暗号化(IRM)し、許可されたユーザー以外は解読・閲覧できない状態を保ちます。万が一ファイルが外部に持ち出されても、攻撃者が中身を閲覧・リークできない状態(無価値化)を作ります。

  1. NDR(ネットワーク挙動検知)による異常トラフィックの即時遮断

深夜時間帯などの通常業務外における「特定サーバーから外部の不審なIPアドレスへの大容量データ送信」をNDRツールで検知し、自動でセッションを切断する運用を構築します。