医療機関や制御システム(OT)を標的とする「IoT/IoMT機器」のセキュリティ
安全上の注意:医療機器・OT・IoT機器へスキャン、更新、遮断、設定変更を直接行うと、診療や操業、安全へ影響する場合があります。メーカー、保守担当者、資産所有者の承認手順に従ってください。
【背景と概要】
オフィス、工場、プラント、そして医療機関(ヘルスケア)において、あらゆる機器がネットワークへ接続される「IoT(Internet of Things)」や「IoMT(Internet of Medical Things)」の活用が急拡大しています。特に病院におけるネットワーク接続型医療機器(輸液ポンプ、患者モニタリング装置、MRI、検体分析装置等)や、工場におけるスマートセンサー・制御機器は、業務効率化や高度な診断に大きく貢献しています。
しかし、これらの専門機器は一般的なPCやサーバーとは大きく異なる特性(OSの古さ、セキュリティソフトの非対応、更新の難しさ等)を持つため、セキュリティの最大の「盲点」となり、ネットワーク侵入の足がかりとして悪用されるリスクが高まっています。
【IoT/IoMT機器が抱える構造的な脆弱性】
機器の設計思想や運用上の制約がセキュリティ対策を困難にしています。
- セキュリティソフト(アンチウイルス/EDR)の導入不可
多くのIoT/IoMT機器は独自のリアルタイムOSや組み込みLinux、旧型のWindows(Windows 7等)で動作しており、通常のEDRエージェントやアンチウイルスソフトを物理的・ライセンス的にインストールすることができません。
- メーカー認証や医療機器規制によるパッチ適用の遅れ
医療機器等は安全性認証を受けているため、OSの修正パッチを自由に適用すると医療機器としての認証が失われる可能性があり、既知の脆弱性が長期間放置されやすい傾向にあります。
- 出荷時初期パスワードの変更不徹底
機器の保守や初期設定用の管理者アカウント(admin/admin 等)のパスワードが変更されないまま学内・院内LANへ接続されているケースが後を絶ちません。
【インシデント発生時の社会的被害】
IoT/IoMT機器がマルウェアに感染すると、機器自体の誤作動やデータ改ざんにより患者の健康や生命に直結するリスクが生じます。また、IoMT機器を経由して電子カルテデータベースへ侵入され、病院全体の診療活動が全面停止する巨大な社会事故に直現します。
【IoT/IoMTセキュリティ確立に向けたアプローチ】
「機器そのものを守る」から「ネットワーク側で隔離・監視する」設計への転換が必要です。
- 専用VLANによる厳格なマイクロセグメンテーション
医療機器や工場IoT機器を、通常の業務PCやインターネットに繋がるネットワークから厳格に分離された「専用VLAN(セグメント)」へ配置し、許可された特定のサーバーとしか通信できないようアクセス制限(ACL)をかけます。
- パッシブ(受動的)医療・IoT資産可視化ツールの活用
機器に負荷をかけずにネットワークトラフィックを傍受・解析する専用ツール(Medigate、Claroty等)を導入し、院内・工場内のすべての接続機器の型番・OS・脆弱性状況を全自動でインベントリ化・異常検知します。
- 調達時における「MDS2(医療機器セキュリティ開示書)」の要求
新しい機器を調達する際、メーカーに対してセキュリティ仕様や脆弱性対応方針を明記した「MDS2(Medical Device Security Disclosure Statement)」の提出を義務付けます。